蕃茄の野球考察ブログ

プロ野球を中心に野球に関するトピックについての考えをまとめていきたいと思います。

【セ・リーグのDH制導入について】

 巨人が提案したセ・リーグのDH制導入案について、現状導入は見送られる形となったが、プロ野球OBやファンなどから様々な意見が飛び交っている。

 私個人の意見として、セ・リーグにおいて全試合DH制に移行することは反対である。ただし、DH制自体のメリットは数多くあり、デメリットを上回ると考えているため、巨人から提案もあった部分的な導入(ホーム、ビジター各5カードの30試合または60試合)に関しては前向きな検討を期待している。結論としてどっちつかずな意見と言えばその通りだが、DH制に対する考えについてこの先で示していきたい。

 

<エンターテイメントとしてのプロ野球

 プロ野球は“観る人を楽しませる”という役割が大きい興行スポーツである。このことがアマチュア野球との違いであり、何かしら制度を変える、導入する際には考慮する必要がある部分であると感じる。

 個人的にはDH制の有無は両者ともそれぞれのおもしろさがあると感じており、現行のセ・パ各リーグで異なる形を採っていることは、両者を楽しむことができるという大きなメリットがあると考える。これがセ・リーグが完全にDH制を採用することに対しては反対の理由である。

 次にエンターテイメントとしてファン目線でのDH制の有無それぞれの具体的なメリットを自分なりにまとめる。

 

DH制あり

●出場できる野手が1人増える

●打撃に期待の薄い投手の打席がない

DH制なし

●代打や継投のタイミング等采配の妙を楽しみやすい

●打力のある投手の打席を見ることができる

 

 以上のようなものが主に挙げられ、両者の魅力を共存させるためにも制度を完全に統一しないほうが望ましいと考える。

 

<DH制がリーグの実力差に影響するか>

 近年ソフトバンク日本シリーズ連覇をはじめ、交流戦での戦績などからセ・パ両リーグ間での実力差を懸念する声が挙がっており、DH制の有無がその一因ではないかという意見もSNS上などで目にする。ここではそれについての私見を示していく。

 

野手の育成

 まず、単純にDH制があることでレギュラーポジションが1つ増える点、ポジションや守備力に関わらず、“打てば試合に出られる”という点が野手にとってメリットであり、ポジションの問題等によるベンチやファームでの飼い殺しを防ぐことにもなると考えられる。

 また、打撃が売りの選手だけでなく守備力が売りの選手の育成にもメリットがあると考える。例えば守備力の高い選手を打撃に目を瞑って起用していこうとした場合、明らかに打力の低い投手がいる打線と打撃に期待ができるDHの選手がいる打線では許容できる打力が異なってくると推測される。

 これらのことから、野手に関してはDH制があることでより長所を伸ばす育成がしやすく、その結果スケールの大きい選手が誕生しやすいといった可能性は考えられる。そのため、セ・リーグにおいても部分的にDH制を導入することは賛成である。

投手の育成

 投手はDH制により相手打線の打力が上がるため、抑えるためのハードルは多少高くなる。また、試合展開によって代打を送られるという作戦面での降板がないため、ピッチングの出来次第で投げるイニングを延ばしやすいといった面はあるかもしれない。ただし、これらはほとんど先発投手に限った話であり、投手の育成に直接的な影響はそこまで大きくないのではないかと考える。

ドラフト戦略等の編成

 野手に関しては、育成の部分でも示したようにDH制があることで長所を伸ばしやすいという面があると想定されるため、ドラフトにおいても一芸に秀でたタイプの選手を指名しやすいと考える。助っ人外国人についても同様に、打撃に魅了はあるが守備に難があるという選手も選択肢に入りやすくなるだろう。

投手の打撃

 DH制を採らない場合、当然投手も打席に立つことになる。個人的には打力の高さをより前面に出す投手がセ・リーグに出てきてもおもしろいと思う。そのためには各球団が投手の打撃をより評価する必要が出てくると思われるが、投手の打撃に見どころがあるかどうかは今後セ・リーグのDH制導入を検討するポイントになり得ると考える。

 

 DH制の有無がリーグの実力差を生むかという点については、DH制を採ったほうが野手の育成に関して多少有利な面があると考える。しかし、近年のパ・リーグ優勢の構図は三軍制を機能させ、資金力もあるソフトバンクをはじめ、パ・リーグの各球団がセ・リーグと比較し、時代のトレンドを素早く取り入れるなどチーム強化の努力で上回ったことが大きいのではないかと考える。

 

<アマチュア球界におけるDH制>

 アマチュア球界の中で社会人、大学生のカテゴリーではDH制が採用されている場合が多く、高校生以下の年代のカテゴリーでは採用されていない場合が多い。これはDH制が投手、野手とある程度選手としてのスタイルが確立されてきた段階で採用され始めるとも言える。

 私個人の意見としては、高校生以下の年代においてもDH制を採用を検討することが一般的となり、大会によって異なるような形でも良いと考える。理由は選手の出場機会が確保できることや肩肘に不安のある選手を守らせなくても良いなどといった障害予防の観点でメリットがあると考えるからである。また、投手が打力も兼ね備えているケースが多いはずだが、DH制はルール上採用したとしても使うかどうかは各チームの戦術に委ねられるため、融通が効くという点からももっと検討はされても良いと思う。

 

<まとめ>

●興行の面、一ファン目線からDH制の有無両方を楽しめる形が良い。

●DH制は野手の育成に多少有利であると考えられる。

セ・リーグにおいてもDH制の部分的な導入には期待。

●近年のパ・リーグ優勢の構図はDH制の有無が一因かもしれないが、主な要因はパ・リーグ各球団のチーム強化が奏功していると考える。

●高校生以下の年代のカテゴリーでも出場機会の確保や障害予防の観点から、DH制の採用をもっと検討しても良いと考える。